出血性進行流産に対する取り組み
妊娠初期に性器出血があると、「流産してしまうのでは…」と不安になる方が多くいらっしゃいます。
確かに、出血が流産のサインになることもありますが、実際には流産の原因の多くが、受精卵側の染色体異常によるもので、出血とは直接関係がないこともよくあります。
一時的な出血があっても、その後問題なく妊娠が継続するケースも多いため、すぐに悲観する必要はありません。
とはいえ、「出血のたびに必ず流産してしまう」といったご経験をされている方がいるのも事実です。そういった場合には、一般的な止血剤だけでなく、ホルモン剤などを組み合わせた適切な薬物治療が必要になることがあります。
妊娠初期の出血で不安を感じている方や、同じような流産を繰り返して悩まれている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
一般的な流産の原因と出血性流産に対して
一般的に、流産の原因の多くは受精卵の染色体異常によるものですが、それ以外にも要因があります。
いわゆる「不育症」として知られる状態では、抗リン脂質抗体の陽性、血液の凝固異常、免疫バランスの乱れ、または子宮の形の異常などが関係していることがあります。
それに加えて、ごく一部の方では、通常よりもしっかりと黄体ホルモンを補ったり、子宮の収縮をしっかり抑えないと、出血を繰り返してしまうというタイプもいらっしゃいます。当院では、そういった方に対して以下のような治療を組み合わせて行っています。
【1】黄体ホルモン強化療法
妊娠初期に子宮内膜を安定させるためには、黄体ホルモンが非常に重要です。
出血しやすい方には、止血効果の高い内服薬や膣剤をしっかりと組み合わせ、服用・使用タイミングにも工夫を加えることで、当院独自の強化療法を行っています。
【2】子宮収縮抑制剤
着床期から妊娠初期にかけて、不要な子宮収縮が続くと、着床部位の安定性が損なわれる可能性があります。
子宮の動きが活発すぎると考えられる場合には、収縮を抑えるお薬を使って、子宮環境を整えていきます。
【3】止血剤の使用（特に漢方療法）
出血が長引いたり、わずかな出血が続くような場合には、止血効果が高く、長期使用にも適した漢方薬が効果的です。
状況によっては、漢方だけでなく西洋薬の止血剤を追加することで、より確実な対応を行います。
あきらめないで
染色体異常など、受精卵側に原因がある場合の流産は、現代の医療では予防が難しいのが現実です。
しかし、妊娠初期の出血については、医学的にある程度コントロールすることが可能です。
たとえば、「不育症の対策として血液をサラサラにするお薬を使っているから、止血剤は使いたくない」と感じる方もいらっしゃいます。
けれども、出血が止まらずに流産につながってしまっては、本末転倒です。
不育症への対応をしながら、出血を抑えるための治療も同時に行うことは十分に可能です。出血を繰り返して妊娠継続が不安な方、進行流産の経験がある方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。