男性外来について

男性不妊もご相談ください
男性側の不妊に関する検査や治療は、以前に比べ認知が広がり、ご夫婦で一緒に来院されるケースも増えています。当院には、男性不妊の診療に対応する医師が在籍しており、問診や必要な検査を通じて、適切な対応方法をご提案しております。男性不妊に関するお悩みやご不安がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
男性の生殖メカニズム

精子が作られる
仕組み
精子は、精巣(睾丸)内の精細管という細い管の中で約2〜3ヵ月かけてつくられ、精巣上体を通ることで成熟していきます。成熟した精子は、射精の際に精管・前立腺・尿道などを通って、体外に排出されます。この経路は全長で約40cmにも及ぶとされています。精子をつくる機能や通過する経路に問題があると、自然妊娠に影響する場合があります。精子形成に関する検査や相談をご希望の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

子どもの頃の手術が
将来の不妊につながることもあります
男性不妊にはさまざまな要因が関わります。たとえば、精索静脈瘤という血管の異常や、幼少期の鼠径ヘルニア・停留精巣手術の影響で精子の通り道が閉塞するケースも報告されています。また、精液検査では異常が見られず、原因が明確にならない場合でも、自覚症状がないまま不妊の一因となっていることもあります。最近では、生殖医療の進歩により、無精子症と診断された方でも、精巣内精子採取術(TESE-ICSI)により精子が確認できる場合があり、顕微授精を用いた妊娠の可能性も検討されるようになってきています。
精子の状態を良くするために
禁煙
喫煙は男性の生殖機能に影響を及ぼす可能性があるとされており、近年の研究では、精子の運動率の低下や形態異常の割合が高くなる傾向が報告されています。また、喫煙と勃起不全(ED)の関係性や、精子形成への悪影響についても指摘されています。これらが原因となって受精能力が低下し、男性不妊のリスクが高まる可能性があるため、妊娠を希望される際や不妊治療中には、禁煙を検討される方が増えています。当院でも、必要に応じて禁煙の取り組みについてご案内しております。ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。
ブリーフよりトランクスを
通気性の低い下着や密着性の高い衣類は体温がこもりやすく、環境によっては精巣温度の上昇につながることもあります。そのため、ゆったりとした通気性の良い下着を選ぶ方もいらっしゃいます。
サウナに長時間入らない
サウナなどの高温環境では、体全体が熱に包まれるため、精巣まわりの温度も一時的に上昇する可能性があるとされています。特に、熱いイスや床に長時間座ると、直接的な熱の影響を受けやすくなるため、生殖機能との関連を気にされる方は、利用時間や温度に気を配るようにしましょう。
ノートパソコンを膝にのせない
ノートパソコンは使用中に熱を発します。特に膝の上に長時間のせて作業を行うと、その熱が下半身に伝わり、精巣の温度が上昇する可能性があるとされています。膝上での使用は避ける、または冷却性のある台やクッションを挟むといった工夫を取り入れましょう
禁欲しすぎない
禁欲期間が長くなると、精子の運動率が低下しやすくなったり、DNAの損傷が増加する傾向があるといわれています。精子は体内で常に生成されており、保存期間が長くなることで非運動精子が増えることもあるため、適度な排出が望ましいとされます。一般的には、精液検査や妊活においては、禁欲期間を1~2日程度とするのが精子の状態を良好に保ちやすいと報告されています。
男性不妊の原因

精索静脈瘤
精索静脈瘤は、精巣からの静脈血がスムーズに戻らず、血管が拡張して「こぶ状」になる状態です。陰嚢内の温度が上がることで、精巣の機能に影響を与える可能性があるとされており、精子の質や量に関わる場合もあります。特に、1人目は自然に妊娠された方でも、2人目がなかなか授からない「2人目不妊」の原因として見つかることもあります。痛みがないケースも多いため、気になる方は検査を通じて早めに状態を確認することをおすすめします。
造精機能障害
精子をうまくつくれない状態は「造精機能障害」と呼ばれ、男性不妊の原因の一つとされています。その要因には、精索静脈瘤、ムンプス(おたふくかぜ)による精巣炎、高熱、または「停留精巣」といった先天的な要因が挙げられることがあります。
治療を始めるにあたり、精液検査、視診・触診、ホルモン検査などを行い、原因や状態を確認します。必要に応じて、抗酸化成分を含むサプリメントを取り入れたり、人工授精(AIH)を実施することもあります。それでも妊娠に至らない場合には、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)など、次の治療法を検討することになります。
勃起障害(ED)
勃起障害(ED)は、性交の際に十分な勃起が得られない、または勃起が持続しにくい状態を指します。 一方で、マスターベーションでは勃起が可能でも、性交時にはうまくいかないといったケースも見られます。治療への不安やプレッシャーなど、心理的要因が関与することもあり、不妊治療に取り組む中で悩まれる方もいらっしゃいます。当院では、プライバシーに配慮し、安心してご相談いただける環境を整えておりますので、気になることがございましたらどうぞお気軽にご相談ください。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
視床下部や下垂体の機能が低下すると、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌が不足し、無精子症や性機能の問題、思春期の身体的変化が十分に起こらないなどの症状がみられることがあります。このようなホルモンの異常に起因する不妊症は、血液検査やホルモン検査によって状態を確認し、必要に応じてホルモン補充などの治療が検討されます。
男性不妊の検査
精液検査
精液検査は、男性不妊の初期評価として行われる大切な検査です。マスターベーションなどにより採取していただいた精液をもとに、精液量、精子の濃度、運動率や運動の質、形態、感染の有無、さらにはDNA損傷率など、複数の項目を確認して総合的に評価を行います。精液の状態は日々変動することがあるため、1回の検査結果だけでは正確な状態を把握しきれない場合もあります。そのため、複数回にわたって検査を行い、安定したデータをもとに適切な診断へとつなげていくことが大切です。
世界保健機関(WHO)が示している参考値では、精液量が1.4ml以上、精子の濃度が1,600万個/ml以上、射精あたりの総精子数が3,900万個以上、そして総運動率が42%以上という水準が目安とされています。
なお、精子の濃度が1,600万個/ml未満である場合は、「乏精子症」と診断されることがあります。また、自然妊娠に向けては、1ml中に4,000万個以上の精子が確認されることが望ましいとする意見もありますが、必ずしもすべてのケースに当てはまるわけではありません。
精子数が少ない背景には、精索静脈瘤や造精機能障害(精子をつくる機能が低下している状態)などが関与していることがあります。ただし、現時点では原因が特定できない「原因不明」のケースも少なくありません。
触診、超音波検査
男性不妊の診断においては、精巣のサイズや精索静脈瘤の有無を確認することが重要なポイントとなります。こうした評価のために、触診や超音波検査を行うことがあり、当院では、男性不妊を専門とする医師が患者さまの症状やご状況に応じて、必要な検査や対応を丁寧にご案内いたします。検査に対するご不安が少しでも和らぐよう、事前にしっかりとご説明したうえで進めてまいりますので、どうぞ安心してご相談ください。
染色体検査
染色体検査は、採血によって遺伝情報の構造や数を確認する検査で、無精子症や乏精子症などが見つかった際に、遺伝的な要因の有無を確認するために行われることがあります。染色体に変化が見られると、精子の形成や生殖機能に影響している可能性があると考えられており、治療方針を検討する上での参考情報となることがあります。検査結果で異常が見つかった場合は、専門の医師がその内容や今後の見通しについて丁寧にご説明し、サポートいたします。
精子DNA断片化検査
精子のDNAは、加齢や生活習慣、ストレスなどの影響により断片化(損傷)することがあるとされています。精子DNA断片化検査では、こうした損傷の程度を調べることで、妊娠に影響を及ぼしている可能性のある要因を確認し、今後の治療方針を検討する一つの材料とすることができます。検査結果をふまえたうえで、抗酸化成分を含むサプリメントの活用や、生活習慣の改善に関するアドバイスを行うこともあります。
AZF検査
Y染色体には精子形成に関わる重要な領域が存在しており、その一部に欠失があると、無精子症や乏精子症の原因となっている可能性があると考えられています。こうした遺伝的要因を調べるために行われ、TESE(精巣内精子採取術)を検討する際の判断材料となることがあります。特に、精子が回収できる見込みに影響する場合もあるため、事前に実施することで治療方針の検討に役立つケースもあります。
ホルモン検査
男性ホルモンや性腺刺激ホルモンなどの数値を調べることで、精子形成に関与する体内のホルモンバランスを確認することができます。ホルモン検査は、精巣や下垂体の機能を評価するうえで役立つことがあり、無精子症のタイプ(閉塞性・非閉塞性)を鑑別する際や、ホルモン異常による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の可能性を検討するために実施されます。
無精子症と診断された方へ

無精子症と診断された場合でも
できる治療があります
無精子症とは、精液の中に精子が確認されない状態を指し、男性不妊の一つとされています。この状態には、精子をつくる機能自体が低下している「非閉塞性無精子症」と、精子はつくられているものの射精に至る経路がふさがれている「閉塞性無精子症」があります。検査により無精子症と診断された場合でも、精巣内からの精子採取(TESE-ICSI)や、顕微授精などを視野に入れた治療が検討されることがあります。
症状のタイプや状態に応じて、医師が患者さま一人ひとりに合った治療の選択肢をご案内いたします。無精子症と診断されても、前向きに治療を考えていけるケースはありますので、どうぞ安心してご相談ください。
精巣内精子採取術(simple TESE)
閉塞性無精子症の方に対して行われる精子回収術では、精巣を小さく切開し、精細管から精子を探索して採取します。精子の通り道が閉塞しているものの、精巣内では精子がつくられていると考えられるケースで実施される処置です。手術は局所麻酔下で行われ、処置時間は切開から縫合までおおよそ10分程度です。多くの場合、日帰りでの対応が可能とされています。
顕微鏡下精巣内精子採取術(micro TESE)
非閉塞性無精子症と診断された方を対象に実施される処置で、精子の回収を目的とした精密な方法の一つです。 手術では、精巣の表面を覆う白膜を切開し、手術用顕微鏡を使用して精巣組織の中を観察しながら、より良好な状態の精細管を選別して採取していきます。片側の精巣から精子が確認できなかった場合は、必要に応じてもう片方の精巣からの採取を行うこともあります。通常、局所麻酔下で行われ、日帰りでの手術が可能とされるケースもありますが、術後の経過には個人差があります。
TESE-ICSI 精巣内精子使用ICSI
TESE(精巣内精子採取術)で採取した精子を用いて、卵子に1つずつ精子を注入する顕微授精(ICSI)を行う治療を、TESE-ICSIといいます。この治療は、精子の数が非常に少ない場合や、精子の運動性が低い場合などに検討されることがあり、顕微鏡下での繊細な操作を伴うため、高度な技術が求められるとされています。当院では、TESE-ICSIに関する診療に長年取り組んでおり、これまで多くの患者さまの治療に携わってまいりました。治療に関する内容や流れについては、医師より丁寧にご説明いたします。気になる点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
AID
精子提供による人工授精(AID)は、男性側からの精子の採取が困難な場合や、無精子症などの医療的な理由によって精子が得られないケースで検討されることがあります。
精子凍結保存について

精子凍結保存治療も行っております
精子凍結保存は、妊よう性を将来にわたって保つための手段の一つとして、近年注目されています。当院では、人工授精や体外受精に備えての保存はもちろん、がん治療やその他の医療的事情により、今後の妊娠の可能性に影響が及ぶと考えられるケースでも、事前に凍結を検討いただけるよう体制を整えております。
提出された精液、あるいは手術で採取された精巣内精子は、凍結処理を行ったうえで、−196℃の液体窒素の中で厳重に保存されます。
凍結保存に関するご希望やご質問がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。専門スタッフが丁寧にご案内いたします。
処置当日に来院できない方へ
ご連絡ください
採卵や人工授精の予定日当日にご来院いただくことが難しい場合、あらかじめ精子を凍結保存しておくことで、スムーズに治療を進めることが可能になります。一般的に、凍結精子を使用した人工授精や体外受精は、新鮮な精子を使用した場合と比較すると、妊娠率がやや低くなる傾向があると報告されています。そのため、凍結精子を使用する場合には、状況に応じて顕微授精(ICSI)が検討されることもあります。事前の精子凍結についてご検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
無精子症、高度乏精子症の方へ
ご相談ください
無精子症や高度乏精子症と診断された場合でも、精巣内からの精子採取(TESE)をはじめとした医療的アプローチによって、妊娠につながる可能性が検討されることがあります。当院では、男性不妊を専門とする医師が診療を行い、患者さまの検査結果やご希望をふまえたうえで、治療の選択肢をご案内しております。まずは一度ご相談ください。
がんと診断された方へ
可能性を広げられます
抗がん剤や放射線などの治療は、個人差はありますが、生殖機能に影響を与えることがあるとされており、妊よう性の温存を希望される場合には、がん治療開始前に精子凍結をご相談いただくことをおすすめしています。凍結保存された精子があることで、治療後に不妊治療を検討する際の選択肢が広がる可能性があります。どうぞお気軽にご相談ください。