男性の検査について|リプロダクションクリニック大阪|大阪市北区の不妊治療専門クリニック

男性の検査について MALE

男性の触診、超音波検査、採血

精巣の触診、超音波検査

男性不妊の診療では、「精巣(せいそう)」の状態を確認することがとても大切です。

当院では、初診の患者様には必ずこの検査を行っており、精巣の健康状態や、不妊の原因となりうる病気がないかをしっかりチェックします。

まず触診では、ベッドに横になったり立った状態で、陰嚢(いんのう:精巣が入っている袋)を直接やさしく触れながら、精巣の大きさ・かたち・かたさ・痛みの有無などを確認します。

次に、超音波検査(エコー検査)では、プローブと呼ばれる機械を陰嚢に軽く当てて、精巣の中やまわりの状態をリアルタイムの映像で確認します。

これによって、男性不妊の原因としてもっとも多い「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」や、精巣腫瘍、精路(せいろ:精子の通り道)の狭さ・詰まりなどの異常がないかをチェックすることができます。

触診も超音波検査も、痛みはほとんどなく、数分で終わる簡単な検査です。安心してお受けください。

男性のホルモン検査

男性不妊の原因を調べるうえで、ホルモンの状態をチェックすることはとても大切です。

当院では、採血によって主に3つのホルモンを調べる検査を行っています。どれも男性の妊娠力に深く関わっている重要なホルモンです。

■ FSH(卵胞刺激ホルモン)
脳の下垂体(かすいたい)から出るホルモンで、精巣に「精子をつくれ」と命令する役割を持っています。

■ LH(黄体形成ホルモン)
こちらも下垂体から分泌され、精巣に「男性ホルモン(テストステロン)を出せ」と指示するホルモンです。

■ テストステロン(男性ホルモン)
精巣で作られるホルモンで、精子をつくるために欠かせないホルモンです。性欲や勃起にも関係しています。

これらのホルモンに異常があると、精子の産生や性機能に影響を与えることがあります。
そして、どのホルモンが高いか・低いかによって、「どこに原因があるのか」がわかるのも、この検査の特徴です。

たとえば…
・FSHとLHが高い → 精巣そのものに問題がある可能性があります。
・FSH、LH、テストステロンすべてが低い → 脳の指令を出す場所(下垂体や視床下部)に原因があるかもしれません。
後者のケースでは、薬によって改善できる可能性もあるため、早めの診断と治療が大切です。

染色体検査

「遺伝子は細胞の中の核にある」と聞いたことがある方も多いかと思いますが、実は遺伝子は1本1本バラバラにあるのではなく、いくつかがまとまって“束”になって存在しています。 この“遺伝子の束”のことを、染色体(せんしょくたい)と呼びます。

男性不妊の原因の中には、この染色体に異常があるケースが一定数あります。 染色体の異常には、大きく分けて以下のようなタイプがあります。 構造異常(転座、逆位、欠失など:染色体の一部が入れ替わったり、向きが逆になったり、欠けている状態) 数的異常(染色体の本数が通常と異なる状態。たとえばクラインフェルター症候群〈47,XXY〉など)

これらの異常は、特に以下のような方で見つかることが多くなります。 精子がまったく見つからない(無精子症) 精子の数が極端に少ない 精子の動きが極端に悪い

そのため当院では、このような重度の造精機能障害がある方には、必ず染色体検査をおすすめしています(採血で調べます)。

■ 染色体異常が見つかった場合の治療方針について たとえば、無精子症の方で最も多い染色体異常の一つであるクラインフェルター症候群(47,XXY)の場合、 実はmicroTESE(精巣内から直接精子を探し出す手術)で精子が見つかる確率が比較的高いことがわかっています。
そのため、当院では**fresh microTESE-ICSI(手術当日に採れた精子で顕微授精を行う)**を積極的にご提案しています。 一方で、**XX男性(見た目は男性だが、性染色体は女性と同じ「XX」)**の場合には、 自分自身の遺伝子を持つお子さんを得ることが難しいため、別の選択肢を考える必要があります。

■ 染色体検査は「今後のご家族計画」を考えるうえでも重要です 染色体異常がある場合、受精卵に異常が出やすかったり、将来的にお子さんが不妊症など親と同じような問題を持つ可能性もあります。 そのため、染色体検査は単に今の治療方針を決めるためだけでなく、 将来を見据えたご家族の計画を立てるうえでも非常に重要な検査といえます。

AZF検査

AZF(エーゼットエフ)とは、男性のY染色体に存在する「精子をつくるための遺伝子のまとまり」のことを指します。正式には「Azoospermia Factor(無精子症因子)」と呼ばれ、精子をつくる機能と深く関わっています。 このAZF遺伝子には、a、b、cという3つの領域があり、どこかに欠け(欠失)があると、男性不妊の原因となることがあります。特に、無精子症や重度の乏精子症など、精子がほとんど見られないような場合には、このAZFに異常がないかを調べることがとても重要です。検査は採血で行います。 AZFのどの領域に異常があるかによって、治療の選択肢が大きく変わってきます。 ● AZFaの欠失 この領域に欠失があると、精子がまったく作られなくなり、無精子症になります。精巣から直接精子を探す手術(microTESE)を行っても、精子が見つかる可能性はありません。そのため、精子提供による妊娠が唯一の選択肢となります。 ● AZFbの欠失 基本的にはAZFa欠失と同様に、無精子症となり、microTESEでも精子が見つかる可能性はほとんどありません。ただし、欠失が一部だけに限られている「部分欠失」であれば、精子が作られている可能性もあり、手術で精子が回収できることもあります。 ● AZFcの欠失 このタイプの欠失は幅が広く、人によって症状に差があります。ほとんど問題がない場合もあれば、無精子症になる場合もあります。しかし、たとえ無精子症でも、microTESEで精子が見つかる確率は意外と高く、欠失のない方よりも回収率が高いという報告もあります。当院では、AZFc欠失がある方に対しても積極的にfresh microTESE-ICSI(当日手術・当日顕微授精)をおすすめしています。 このように、AZF検査は染色体検査と並んで、男性不妊の原因を遺伝レベルで調べるためにとても重要な検査です。治療方針を決める上でも、また将来の遺伝カウンセリングの必要性を考えるうえでも、大きな手がかりとなります。