慢性子宮内膜炎(BCE)と薬物療法・手術療法
慢性子宮内膜炎(BCE)とは
慢性子宮内膜炎は、子宮内膜に持続的な炎症が生じている状態です。感染、免疫異常、または不特定の原因によって引き起こされることがあり、着床不全や流産の原因となるとされています。
慢性子宮内膜炎は無症状なことが多く、子宮鏡で診断できる場合もありますが、子宮内膜生検（内膜の組織を一部採取する）を行い、得られた内膜組織中のCD138陽性細胞数により評価する方法が現在最も信頼性の高い検査方法です。
治療は抗生物質を用いたアプローチと、手術療法があります。
第１選択薬で治癒する確率は８０から９０％ですが、それでも治癒しない場合には、抗生物質の種類を変更して治療を試みますが、複数種の抗生剤を用いても効果がない場合や、できるだけ早い治癒を目指したい場合、何らかの理由で薬物療法が適さない場合は、子宮内膜を掻爬する手術を検討します。
薬物療法
慢性子宮内膜炎に対する抗生物質による治療の第一選択薬は、ドキシサイクリン(ビブラマイシン)100mg を1日2回14日内服する方法です。ドキシサイクリンはテトラサイクリン系抗生物質ですので、内服中の妊活は原則としてお控えください。
それでも治癒しない場合で薬物療法を継続する場合は、フラジール＋シプロフロキサシンによる治療を行います。シプロフロキサシンはニューキノロン系抗生物質ですので、内服中の妊活は原則としてお控えください。
それでも治癒しない場合の治療方針については、さらに別の抗生物質を内服する場合と手術療法を行う場合があります。外来でご相談ください。
手術療法
慢性子宮内膜炎は着床を阻害する原因として知られますが、現在世界のスタンダードな治療は抗生剤治療です。しかしながら、漫然と抗生剤を使用することで薬剤耐性菌(治療に使用する抗菌薬が効かなくなる)という重大な問題が指摘されています。
当院では新たな治療戦略として、慢性子宮内膜炎に対して、抗生剤治療ではなく、子宮内膜を過度に傷つけない組織回収システムを用いた日帰り手術によって、慢性子宮内膜炎を治療しております。従来の子宮内膜掻爬術も可能です。
抗生剤治療では、改善しない場合に何度も検査をする必要があり、時間とコストの問題、そして先ほどの薬剤耐性菌の問題がありますが、手術療法によって短期間での慢性子宮内膜炎の改善が期待できます。