凍結融解胚移植の３つのプロトコール
当院では、凍結して保存された胚を移植する際に、①ホルモン補充周期、②自然排卵周期、③自然に内膜を育ててから黄体ホルモンを補う（NPP）周期、の3つの方法から選んで治療を行っています。
一般的に、凍結融解胚移植は新鮮胚移植よりも妊娠の可能性が高いため、多くの方にこの方法をおすすめしていますが、状態に応じて新鮮胚での移植も対応しています。
それぞれの方法には特徴があり、患者さまの体調やご希望に応じて最適な方法をご提案しています。なお、過去にある方法で妊娠されたことがある方については、同じ方法を優先して検討することが多いです。
また、保険診療での移植は、基本的にホルモン補充周期を用いて行っています。
①ホルモン補充周期
この方法は、当院で最も多く行っている移植方法です。
月経が始まって3〜5日目からホルモン剤を使って、移植のタイミングを調整していきます。
ホルモン補充周期の大きな特長は、卵胞の育ち方や排卵のタイミングに左右されないため、治療日程を柔軟に調整できる点です。排卵障害や黄体機能不全を気にする必要がなく、どのような体質の方にも合わせやすい方法です。さらに、子宮内膜がやや薄い場合でも、十分な厚さになるまでお薬で調整しながら待つことが可能です。
一方で、使う薬の種類が多いため、人によっては負担に感じることもあります。また、薬の効き方に個人差があるため、まれに排卵が起きてしまい、移植がキャンセルになるケースもあります。お薬にかかる費用も一定程度あり、妊娠後もしばらくの間は継続して使い続ける必要があります。
②自然排卵周期
ご自身の自然な排卵のタイミングに合わせて、胚移植の日を決める方法です。
過去に自然妊娠やタイミング法・人工授精で妊娠されたことがある方、ホルモン補充周期でうまくいかなかった方などに適しています。
この方法のメリットは、使用するお薬が少なく、体への負担が軽いことです。妊娠後も服用する薬が少なくて済むのも特長です。
一方で、卵胞の育ち具合や排卵のタイミングをこまめにチェックする必要があるため、通院の回数がやや多くなる傾向があります。また、移植の日程は排卵が確認できたタイミングで決まるため、スケジュールの調整がしづらい点もあります。
さらに、卵胞や子宮内膜の状態が十分に整わなかったり、排卵がうまく起きなかった場合には、その周期をキャンセルせざるを得ないこともあります。そのため、月経周期がある程度安定している方がこの方法に向いています。
③自然内膜増殖＋黄体ホルモン(NPP)周期
この方法は、自然な排卵周期とホルモン補充周期の特徴を組み合わせたような治療法です。
治療のスタートは自然排卵周期と同じように月経から始まり、子宮内膜が厚くなる過程は、体の自然なホルモンの働きに任せます。
その後、排卵が近づいてきたタイミングで、黄体ホルモンのお薬を使って子宮内膜の状態をさらに整え、胚移植に向けた準備をしていきます。
自然な流れを活かしつつ、必要なところだけお薬でサポートする方法のため、ホルモン補充周期よりもお薬の量は少なめで、自然排卵周期よりも日程のコントロールがしやすいというバランスの取れた選択肢です。