着床不全の薬物療法(注射・点滴)

ピシバニール免疫療法
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きが過剰で、イントラリピッド療法では効果が得られなかった方、また原因不明の不育症や着床障害があり、同種免疫の異常が関与している可能性がある方に対して、当院ではピシバニール免疫療法を実施しています。
【作用機序および根拠】
ピシバニールは、日本国内で開発・製造された免疫調節製剤であり、夫リンパ球免疫療法の代替療法として臨床応用されています。高NK細胞活性あるいは同種免疫異常が認められる症例に対し、ピシバニールはNK細胞活性の抑制作用、ならびに妊娠維持に有利な免疫環境への改善効果が報告されています。
【投与方法、副作用および安全性】
本剤は0.1mLずつの少量を皮下に注射し、通常10~20箇所に分けて投与します。注射部位の発赤や痛み、一時的な発熱(通常1~3日間)が副反応として見られることがありますが、多くは軽度で自然に改善します。
【禁忌】
ペニシリンに対する過敏症の既往がある方には、本治療を行うことはできません。
ご不明な点がございましたら、担当医師まで遠慮なくご相談ください。

イントラリピッド療法
イントラリピッド(イントラリポス)療法は、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性が高く、不育症の原因になっていると考えられる患者様を対象とした免疫調整療法です。
【作用機序および根拠】
NK細胞は、血液中に存在する免疫細胞の一種で、がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃する役割を持っています。これらのNK細胞は、子宮内膜にも移行し、子宮内膜NK細胞として妊娠の維持に関与すると考えられています。
本来であれば、子宮内膜のNK細胞は胎児を受け入れる方向に働きますが、不育症の一部では、過剰に活性化されたNK細胞が胎児を「異物」と認識し、排除しようとすることで、流産の原因になるとされています。
イントラリピッド(イントラリポス)は脂肪を主成分とする点滴製剤で、もともとは術後や栄養補給目的に使用されてきたものですが、近年ではNK細胞の活性を抑える作用があることがわかっており、不育症治療にも応用されています。
【投与方法、副作用および安全性】
イントラリピッド(イントラリポス)は点滴によって投与され、NK細胞活性が目標値まで下がるまで、必要に応じて複数回の投与を行います。妊娠中にNK細胞活性が再び高くなった場合にも、引き続き本療法を行うことがあります。
妊娠中の使用についても、一定の安全性が確認されており、安心して治療を受けていただけます。点滴時間は1回あたりおおよそ1時間程度です。
【禁忌】
大豆アレルギーのある方には、この治療は実施できません。
詳しくは、担当医師までお気軽にお尋ねください。
着床不全の薬物療法(内服)
ダクチル
子宮収縮検査や、子宮収縮治療については、 こちら をご覧ください。