リプロの不育症検査

不育症のさまざまな原因
不育症とは、流産、死産を繰り返して児が得られない病態と定義されています(日本産科婦人科学会用語集2018)。米国では「2回以上の流産」、一方で欧州では「化学流産も含めた3回以上の流産」が不育症とされています。このように、学会や地域によって定義は若干異なるのですが、いずれにしても、着床してもそれが続かない状態のことを示します。
不育症の主な原因は抗リン脂質抗体陽性、凝固系異常、免疫因子、夫婦染色体構造異常、子宮奇形、胎児染色体数的異常です。

抗リン脂質抗体陽性
抗リン脂質抗体には、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピンβ2GPI複合体抗体、抗PE抗体、プロトロンビン抗体、ループスアンチコアグラントがあります。
人間を構成する細胞の表面の膜(細胞膜)は、リン脂質二重膜で構成されており、抗リン脂質抗体はこれを攻撃します。血管内皮細胞の細胞膜が攻撃されることにより血栓症が生じることがあり、子宮内の微小血管に血栓症ができると流産の原因になります。
凝固線溶系
凝固系の検査には、血液凝固因子12因子、プロテインC、プロテインSの採血があります。異常値が出ると凝固線溶系のバランスが崩れて血栓症が生じやすくなり、流産の原因になります。なお、血小板異常による血液凝固と凝固線溶系による血液凝固はメカニズムが異なります。バイアスピリンは血小板に、ヘパリンは凝固線溶系に作用します。
甲状腺抗体
当院の不育症採血セットには甲状腺抗体(TPO抗体)が含まれています。TSH(甲状腺刺激ホルモン)が正常でもTPO抗体が陽性の場合は妊娠後に甲状腺ホルモン異常が起こりやすくなります。
ナチュラルキラー細胞活性(NK活性)
NK細胞はウイルスや腫瘍から体を守る大切な働きがあります。しかしキラー活性の高いNK細胞が血液を介して胎盤内部に侵入すると胎児を拒絶してしまう可能性があります。NK活性が高い場合は、患者様の状態に応じた治療法で対応します。