AMH検査

AMHは、卵巣内にどの程度の卵子が残っているかを示す「卵巣予備能」の指標とされるホルモンです。
測定は月経周期やホルモンバランスの影響をほとんど受けないため、月経中や排卵期などのタイミングを問わず、いつでも検査が可能です。

AMHは「卵子の質」ではなく「卵子の数」に関係しています。年齢とともに自然に低下する傾向がありますが、個人差が大きく、年齢だけでは判断できない側面があります。ご自身の値を正確に把握することは、将来の妊娠計画や治療方針の決定において、非常に重要な判断材料となります。

たとえAMH値が低めであっても妊娠が可能なケースもあれば、値が高くても加齢的な変化やその他の要因によって早期の対応が必要となる場合もあります。そのため、早い段階での検査が、適切なライフプラン設計につながります。

AMHの数値により、いつから治療を開始すべきか、どのような卵巣刺激法が適しているかといった治療戦略にも明確な影響を与えるため、不妊治療における基礎情報として不可欠です。

なお、2024年6月の診療報酬改定により、不妊症の診断や治療計画を目的とする場合に限り、AMH検査は保険適用となりました。これにより、自己負担額はおよそ1,790円（3割負担）となり、従来よりも受けやすくなっています。

当院では、AMH検査を基本的なスクリーニングの一環と考えており、これまで一度も検査を受けたことがない方、あるいは過去に検査を受けたが時間が経過している方には、再度の検査を推奨しています。

妊活や不妊治療をご検討中の方は、まずは現在の卵巣の状態を把握することから始めてみてください。

DHEA-S（デヒドロエピアンドロステロンサルフェート）

DHEA-Sは、副腎から分泌されるステロイドホルモンの一種で、体内で女性ホルモンおよび男性ホルモンの前駆物質として機能します。
加齢あるいは体質的な要因によりDHEA-Sの分泌量は徐々に低下し、その影響が卵巣機能に及ぶことが近年の研究で明らかとなっています。

特に、血中DHEA-S値が200μg/dL未満と低値である場合、卵巣の反応性が低下し、採卵数の減少や卵子の質的低下といった影響がみられる可能性があります。
このようなケースでは、DHEAサプリメント（1日25〜75mg）の補充により、卵巣予備能の改善が期待されるため、補助的治療として用いられることがあります。

特に高年齢の方、もしくは卵巣機能の低下が認められる方、採卵数が思うように伸びない方にとって、DHEA補充は有用な治療戦略のひとつとなり得ます。

DHEA補充療法はすべての方に適応されるものではなく、血中ホルモン値の評価や全身状態をふまえた上で慎重に判断いたします。
治療方針については、診察時に個別にご提案いたしますので、ご希望の方は医師までご相談ください。

テストステロン（男性ホルモン）

テストステロンは、一般的には男性ホルモンとして知られていますが、女性においても卵巣機能において重要な役割を果たします。

卵胞の初期発育に関与し、前胞状卵胞の成長を促進するとともに、閉鎖卵胞への進行を抑制する作用があることが報告されています。
血中濃度が20ng/dL未満と低値の場合、卵巣の反応性が低下し、治療において採卵数が伸びにくくなる傾向があります。

このようなケースにおいては、**テストステロン補充（例：エナルモンデポ筋注）**を行うことで、卵巣機能の改善が期待されます。
実際に、補充によりテストステロン値を適正範囲まで引き上げることで、採卵数の増加や治療成績の向上が報告されています。

補充の適応や方法については、ホルモン検査結果をもとに個別に判断いたしますので、治療方針の一環としてご希望の方は担当医までご相談ください。

ビタミンD（25-ヒドロキシビタミンD）

ビタミンDは、骨の代謝に関与するだけでなく、卵巣機能や子宮内環境、さらには免疫機能にも幅広く影響を及ぼすホルモン様物質です。

血中ビタミンD濃度が30ng/mL未満と不足している場合、AMH遺伝子の発現が抑制されることによって卵巣予備能が低下する可能性が報告されています。
加えて、着床率や妊娠率の低下、不育症のリスク上昇、さらには妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症との関連性も指摘されています。

そのため、ビタミンDの適切な補充は、妊活開始時から非常に重要であると考えられています。
補充には、ビタミンDサプリメント（1,000～6,000 IU/日）を使用し、血中濃度を30～100ng/mLの範囲に保つことを目標とします。

補充は採卵周期の前段階から開始し、移植周期、さらには妊娠中まで継続することで、より良好な妊娠経過を支える効果が期待されます。

当院では、ビタミンDの測定および補充計画について、各患者さまの状態に応じて適切にご案内しております。ご希望の方は、担当医師までご相談ください。