PRP卵巣内注入療法

卵胞の発育が困難となった方に対し、自己血液由来の成長因子を卵巣内に注入することで卵巣機能を再活性化させる治療法が、PRP卵巣内注入療法(PFC-FD)です。
本治療では、患者さまご自身の血液から抽出した血小板由来成長因子(PFC-FD)を卵巣内に注入し、卵胞の発育を促進することを目的としています。
この成長因子は、本来損傷組織の修復を担う物質であり、組織再生や細胞活性化の効果が期待されており、形成外科や整形外科領域でも広く応用されています。
当院では、採卵時に卵巣内への注入を実施することが多く、処置時の疼痛および合併症リスクを低減しています。
また、外来での注入も可能であり、その際は経腟超音波下にて卵巣の位置と状態を確認した上で、細径針を用いて安全に実施します。
注入後、卵胞の発育が始まるまでには通常2週間〜3ヶ月程度の幅があり、個人差が存在します。
これまで卵胞がまったく確認されなかった方や、反復刺激に反応しなかった症例においても、PRP注入後に採卵が可能となった報告があります。
※本治療は、当院で採卵および胚移植を受けられる方に限定して実施しております。予めご了承ください。
PFC-FD製剤の作製について
採血から製剤作製まではおよそ3週間。
専用チューブで採取した約50mLの血液は、厚労省認可施設であるセルソース社に送られ、感染症検査と高度な濃縮・凍結乾燥処理を経て、半年間保存可能なバイアル2本分のPFC-FDとして返送されます。
このうち1本を卵巣に、もう1本を子宮内膜に使用することも可能です。
感染症(HIV・HBV・HCV等)の有無や血小板数など一定の基準を満たす必要がありますが、ご自身の血液を使用するため拒絶反応の心配がありません。
期待される効果と限界
PRP卵巣内注入法には、以下のような効果が期待されています。
・卵胞発育の再開
・採卵数の増加
・卵子の成熟度および形態的質の改善
・凍結可能な胚の獲得率向上
これらの報告はあるものの、治療効果には個人差があり、全例において有効性が確認されるわけではありません。
特に卵巣機能が著しく低下している症例では、複数回の注入を要する場合や、明確な効果が認められない場合もあります。
PRP療法は、従来の刺激法や治療に反応しなかった症例に対して、新たな選択肢として注目されている再生医療的アプローチです。
適応や治療方針については、診察時に医師が慎重に評価した上でご案内いたします。